カタログ通販 紙媒体からネットへ 新たなビジネスモデルを模索

カタログ通販のリストラ(事業再構築)が続いている。2008年のリーマンショック前後から、インターネットを活用したEコマーズ市場の拡大と紙媒体を主力とするカタログ市場の縮小は消費者の購買スタイルの変化によって決定づけられた。カタログを利用した商品購入者数、購入頻度の減少はカタログ発行部数、回数、ぺージ数削減となって現れている。
こういった中でカタログ各社は①化粧品や健康食品などの新しい商品分野の開拓、②既存カタログ客に向けた買い物の利便性やサービスの向上、③ネット環境の整備、④既存カタログの見直しによる部数、頁数削減など新たな対策を講じている。だが、そういった企業努力を続けているものの、その成果はまだ十分とは言えない。なかでも実用衣料としてカタログ市場の中で底堅い売上を確保してきた下着や靴下も、その鈍化傾向は否めない。
月次売上・減少トレンド
本紙では表1~表4までカタログを発行する大手上々企業4社(スクロール、ベルーナ、ニッセン、千趣会)の月次売上前年同月比を昨年(2015年)4月から本年(2016年)5月までまとめた。

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スクロール
表1のスクロールは昨年夏のカタログから月次売上げがマイナスとなる月が増えている。2015年8月がマイナス3・1%、9月も同1・5%。10月はプラス4・1%と盛り返したが、その後11月から2016年4月までマイナス幅の増減はあるが水面下で推移している。同社は通販インナー事業に関するセグメント情報(売上高と営業利益)を公表(過去7年分)しているが、その一覧表を表2にまとめた。
通販インナー事業の2010年3月期は89億円で、営業利益は5億2900万円となる。翌年2011年3月期は89億2600万円で営業利益5億3300万円。続く2012年3月期の売上高と営業利益が過去最高で売上高104億4800円、営業利益6億3900万円の成績を収めている。だが、それ以降は売上減少が続く。2013年3月期は売上高102億1100万円、営業利益2億9300万円、2014年3月期100億6800万円、営業利益3億1100万円、2015年3月期74億6700万円、2億3000万円、2016年3月期73億4600万円、営業利益2億9700万円となり、今年3月期の売上は減収だが、利益は改善し増加した。特徴的なのは2015年3月期(2014年4月~2015年3月)が前年比で見ると売上高が大幅マイナス(前期比25・9%減)となったこと。金額にすると約26億円ほどインナー売上が減少した。
これは明らかに2014年4月1日から消費税が5%から8%に変わってことで、それ以降のカタログ客の購入回数、頻度、購入商品の内容に大きな変化をもたらしたといえる。これは、カタログに限らず、全ての最終消費財を扱う販路で起こったことで、それにスクロールのカタログビジネスが対応できていなかったことを示している。これまで、カタログ企業の中でも生協などで固定した顧客を多く有し、安定した実績を残してきただけに、消費税増税による消費者の生活防衛意識の高まりは事前予想を上回るものだったと言える。
ベルーナ
ベルーナの2016年3月期は総合通販事業の収支改善が進んだことで増収増益となる。売上高は1317億7000万円、前期比109・2%。営業利益は83億7000万円、前期比131・2%と増加した。 その中心は総合通販の収支が改善されたこと。物流費(6・2億円改善)や原価率(2・1億円改善)が改善され収益性が高まる。中でも売上増の要因としては店舗事業(52店舗)の拡大と新たに連結子会社化した丸長株式会社(売上高36億4000万円)が加わったことが大きい。
表2のベルーナ月次売上(総合通販の衣料分野)の前年同月比推移は月ごとにバラツキが大きく、カタログ投入後の気温変化など気象条件の要素も影響している。昨年2015年12月と2016年1月の冬物商戦はマイナスとなるが、その後の2月、3月は好転した。今期の4月はマイナススタートとなるが、5月には5・2&増(衣料)と好転している。また、強化しているネット環境の整備は進んでいる。CVR(成果率)は向上し、この3月期は前年夏物で5%改善、前年秋冬物11%改善、今年春物で23%改善している。

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ニッセン 
ニッセンの2015年12月期は大幅な減収減益となっている。事業構造改革を進める中で大型家具事業撤退など不採算事業の整理や希望退職者の募集、海外事務所の閉鎖などで特別損失を計上したことも加わり、売上高1572億8900万円、前期比24・5%減、営業損失は81億5900万円(前期損失額66億2800万円)となり、最終当期純損失は133億2400万円(前期当期純損失85億1000万円)となった。同社ではイトーヨーカ堂との協業モデルの構築、付加価値の高い商品開発、インターネットシフトによるカタログの効率化と会わせ各コストの大幅削減を続けているが、その効果はまだ出ていない。
千趣会
千趣会の月次売上推移(表4)は昨年(2015年)8月から2016年3月を除いて毎月マイナスが続いている。2015年12月期は売上高1343億2100万円、前期比94・2%、営業損失は34億3700万円となる。
とくに、主力事業の通販事業は1139億7600万円、前期比91%、営業損失が45億9700万円に達した。年間購入者数は363万1000人で前期比20万8000人減少、それに対し新規会員数は80万5000人で前期比4万6000人減少した。一人当たりの受注単価は1万336円と前期比で280円下がる。また、カタログ発行部数は6568万部で前年よりも193万部と部数は増えているがページ数が大幅に削減されている。販促面では顧客優遇策として実施してきたクーポンをポイントにシフトしたことも顧客から敬遠された一因ともなる。
円安、消費税、ネット
この1、2年のカタログ各社の業績悪化は①明らかに、3年前からの急激な円安がもたらした原価率上昇、②2014年4月に導入された消費税8%対策の失敗、③すでに10年近く対策を実施してきているネット事業への対応がうまくできていないことなどに原因がある。とくに、消費税8%以降の消費者は当初予想以上に生活貿易意識が高まり、必要なものを必要な分しか買わないという堅実な消費スタイルに移行している。政府のインフレ願望とは裏腹に売れ筋は低価格化しており、デフレ再燃というキーワードがあちこちで吹き出ている。
ちなみに、2014年4月から導入された消費税8%にあわせて、価格を引き上げたブランド、商品は、その後苦戦したことが大手流通の業績結果からはっきりしている。また、ネット事業の取り組みは進んでいるが、その成果は不十分だ。カタログからネットで注文を受ける仕組みはできても、それ以上にネットで新しい顧客を獲得することができていない。
現在のカタログ各社のネット事業は既存顧客がネット(スマホ)でも注文できるシステムに移行し、その品物をコンビニや駅のロッカーで受け取ったり、代金決済の利便性を大幅に向上させた。それを「オムニチャネル」と呼んで奨励しているが、その神髄は新しいシステムによる新たな買い物価値の創造と、その結果による新規客獲得が目的だ。だが、実際には顧客増にはなっていない。ネット時代に必要なネットインフラは早急に整備され顧客の利便性は高まったが、それによってネットで物を買う消費者にとってカタログと違う魅力ある商品が品揃えされているかなどの課題は残る。
さらに、カタログとネットはその販売環境が全く違う。カタログで商品購入する消費者は、そのカタログの中で商品を選ぶが、ネットでは無限に近い様々なネット業者との厳しい商品、価格、品質、ブランド競争にさらされ、それぞれの商品を比較される中からひとつの商品が選ばれ購入されていく。カタログからネット受注への移行が進んでいるが、カタログの顧客とネットの顧客は違う。それを踏まえたMDの構築が急がれる。(この記事はマリリンタイムス7月1日号に掲載されています)

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